自動車のブレーキ(駐車ブレーキは除く)は油圧で作動していますが、この油圧を伝達する大切な役割を担っているのがブレーキフルードです。
一般にはブレーキ油とかブレーキオイルとかと呼ばれることも多いのですが、水にもよく溶け、不燃性であるなど、いわゆる油とは性質が大きく異なりますので、ブレーキフルード(ブレーキ液)と呼ぶ方が適切かと思います。
ブレーキフルードは、運転者がブレーキペダルを踏んだ力をブレーキホースやブレーキパイプを通して各車輪のブレーキに伝えるわけですが、力を伝えるだけならばただの水でも大丈夫なのです。
しかし、なぜ水ではダメかというと、まず、水だとブレーキの各部が錆びやすくなってしまうこと、そして、水は容易に凍結したり沸騰したりして、ブレーキ液としての役割を果たさなくなってしまうからです。
このため、自動車に使われているブレーキフルードは、以下のような性質を有しています。
・粘性の低い液体であること。
・圧力によって体積が大きく変化しないこと。
・低温でも凍結しないこと。
・高温でも沸騰しないこと。
・金属やゴムを腐食させたり劣化させたりしないこと。
このように優れた性質を持つブレーキフルードですが、ひとつ大きな欠点があります。
それは、吸湿性が高いことで、時間とともに水分を吸収して性能が低下してしまうのです。
ちなみに、今現在よく使われているブレーキフルードの規格にはDOT3というものとDOT4というものがあるのですが、それぞれの沸点は以下のとおりです。
DOT3 ドライ沸点 205℃以上 ウェット沸点140℃以上
DOT4 ドライ沸点 230℃以上 ウェット沸点155℃以上
ドライ沸点というのは、ブレーキフルードが水分を全く含んでいない状態の沸点で、ウェット沸点というのは、ブレーキフルードが約3.5%の水分を含んでいる時の沸点です。
ブレーキフルードを2年程度使用すると水分量が5%程度になるといわれていますので、2年間でブレーキフルードの沸点はかなり低下してしまうと考えられます。
さて、ブレーキフルードの沸点が低下するとどのような危険があるのでしょうか?
長い下りが続く峠道などで、何度も連続してブレーキを踏むと、ブレーキパッドやドラムブレーキのライニングは摩擦熱でかなりの高温になります。
この熱がブレーキフルードに伝わると、ブレーキフルードの温度もどんどん高くなってしまいます。
このような状態が続くと、ブレーキフルードが沸騰してたくさんの気泡が発生します。こうなるとブレーキペダルをいくら強く踏んでも気泡が圧縮されるだけでブレーキが全く効かなくなってしまうのです。
この現象を「ヴェイパーロック現象」と呼びます。
ブレーキフルードを交換せずに長く使い続けることがいかに危険かということがおわかりいただけるかと思います。
安心して車を運転するために、車検の際には必ずブレーキフルードを交換することを強くオススメします。
当店では、DOT4規格のブレーキフルードを使用し、車検整備の際にはお客様から特に要望がなくとも必ずブレーキフルードを交換しておりますのでご安心下さい。