ガソリンスタンドで無料点検をしてもらった際に、「バッテリーが弱っているので交換の必要があります」と言われたことはありませんか?
あまりバッテリーが弱っているという印象はないのだけれど、前回いつ交換したか覚えていないし、弱っていると言われたら不安になるので、つい勧められるがままに交換してしまうなんてことはよくある話です。
バッテリーも安いものではないですから、できれば寿命ギリギリまで使いたいものですよね。
ところが、このバッテリーの寿命を見極めるのは意外と難しいのです。
使い方によっては10年近く使えるものもありますし、場合によっては2、3年でダメになることも珍しくありません。
平均寿命は4、5年と言われていますが、最近は充電制御車やアイドリングストップも増えてきましたから、バッテリーにとってはより過酷な環境となってきていますね。
ところで、そもそもバッテリーはどのようにして電流を流しているのでしょうか?
自動車のバッテリーは鉛蓄電池といわれるもので、電極には鉛と二酸化鉛を、バッテリー液には希硫酸を用いており、化学反応によって電流を流しています。
どのような化学反応を起こしているかというと、放電する場合は以下のような化学式となります。
【-極】 Pb + H2SO4 → PbSO4 + 2H+ + 2e-
【+極】 PbO2 + H2SO4 + 2H+ + 2e- → PbSO4 + 2H2O
-極から+極へ2e-という電子が流れるために、電気が発生するわけです。
この時、H2SO4(硫酸)が分解されて、+極にも-極にも、PbSO4(硫酸鉛)が生成されていることがわかります。
同時にH2O(水)も発生しますので、希硫酸(バッテリー液)の濃度が低下し、比重も下がります。
充電が行われると上記の化学式は逆の反応を起こしますので、硫酸鉛は溶け出して、希硫酸(バッテリー液)の濃度が高くなります。
つまり、理論上は、放電と充電は半永久的に繰り返すことができるわけです。
しかし、実際には徐々にバッテリーは劣化し、やがて寿命を迎えることになります。
なぜ、バッテリーが劣化し寿命を迎えるかというと、それにはいくつかの要因がありますが、大きな要因のひとつとしてサルフェーションの発生が挙げられます。
放電時に電極に生成されるPbSO4(硫酸鉛)は、最初はペースト状のもので、充電することで簡単に溶け出すのですが、長時間にわたり放電された状態が続くと、電極の表面に生成されたPbSO4(硫酸鉛)が結晶化し、充電してもなかなか溶け出さなくなります。
この状態をサルフェーションと呼びます。
サルフェーションが進行すると、バッテリーの充電容量がどんどん少なくなり、やがて車のエンジンを始動するための電気を貯めることができなくなってしまうわけです。
以上のことから、自動車のバッテリーはなるべくフル充電状態にしておく方が劣化しにくいということがわかります。
なので、毎日、長い距離を走る車のバッテリーは比較的長持ちしますが、たまに短距離しか乗らない車のバッテリーは早く寿命を迎えてしまうわけです。
当社では、車検整備の際にテスターにてバッテリーの状態を測定し、充電により回復が見込めるバッテリーについては、時間をかけて低電流でゆっくりと充電します。
ただし、使用年数が5年程度以上で、性能が大きく低下しているものは、あまり回復が見込めないため、交換をオススメしています。
バッテリーはエンジン始動に欠かせない重要なパーツですから、早めの点検をお忘れなく。