コンピュータがあてにならないこともある【宇都宮市・壬生町の車検、鈑金塗装】

近年の自動車は多くの部分がコンピュータで制御されていますので、整備や故障診断においても、スキャンツール(診断機)が不可欠となっています。
それによって、不具合箇所や故障箇所を特定することが容易になった反面、コンピュータを過信することで思わぬ誤診につながる恐れもあります。

一例をご紹介しましょう。

先月、入庫したフィアット・グランデプント。
エンジンは始動するものの、シフトが1速にもリバースにも入らず全く走行不能ということで、弊社にレッカーされてきました。
フィアットのATには、アルファロメオのセレスピードと同様の、デュアロジックというちょっと特殊なシステムが採用されているのですが、これは、日本車の多くに用いられているATやCVTとは異なり、MTと同様の乾式クラッチとミッションをコンピュータが制御して変速するものです。
なかなか優れたシステムだとは思うのですが、シフトが入らない、ギアが抜けるといったトラブルも多いようです。

さっそく、エンジンを始動してシフトチェンジを試みますが、エンジンを何度かけ直しても、やはり1速にもリバースにもシフトが入りません。
とりあえず、専用のスキャンツールにて故障コードを確認してみたところ、以下のようなコードを拾いました。

エラーP060C2

このうち、”P1818″は走行中にギアチェンジがうまくいかなかったことが記録されたもので、”P060C”はミッション・コントロールユニットの不具合を示したものです。
いったん、これらのエラーコードを消去した後、再度エンジンを始動してみましたが、症状は変わらず、再び”P060C”のエラーコードを拾いました。
この結果だけを見ると、ミッション・コントロールユニットが故障していると判断してしまいそうですが、コントロールユニットは7万5千円もする部品なので、試しに交換してみるというわけにもいきません。
さらに、ライブデータの動きを見たりアクチュエーターのテストを行ったりしたところ、コントロールユニットは正常に作動しているように思われます。

ネットで整備事例を探してみると、同様の症状でクラッチに異常があったケースがいくつか見つかりましたので、お客様の了解を得た後、まずはミッションを降ろしてクラッチを点検することにしました。

クラッチ

クラッチディスクは、かなり摩耗しているものの滑るほどではなく、致命的な不具合は見られません。

fiatグランデプント01

ミッションケース側は、かなりのダストが蓄積し、レリーズベアリングもかなりへたってきている様子ですが、一見、あまり不具合はなさそうに見えます。
が、レリーズベアリングを外して、レリーズフォークを裏返してみると…

レリーズフォークの亀裂

レリーズフォークの軸に大きな亀裂があり、それによって軸が僅かに曲がっています。
このため、レリーズフォークの回転に大きな抵抗が生じ、デュアロジックユニットがクラッチを切ろうとしても切れないことから、コントロールユニットの不具合というエラーが記録されてしまうようです。

結局、クラッチ関連一式とレリーズフォークを交換することで不具合は解消し、スムーズにシフトチェンジすることが可能となりましたが、安易にコントロールユニットを交換したりすると、高額な出費にも関わらず不具合は解消されないという最悪の結果になるところでした。
このように、コンピュータの診断結果が絶対ではないので、故障診断にあたっては常に慎重に取り組むように気をつけております。

フィアット500でも同様のデュアロジックユニットが採用されていますので、シフトが入らなくなるなどの不具合が生じた場合には、ぜひお気軽にご相談下さい。

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